「母ではなくて、親になる」を読んでみた
こんばんは★
山崎ナオコーラさんの、「母ではなくて、親になる」を読んでみました。話題みたいですね。私は書店でたまたま手に取って購入しました。
一言で言えば、面白かった!です。
まずタイトルからして、いわゆる「母親像」にとらわれず楽にやろう!というスタンスの育児本かな?と思いましたが、それよりも自身の仕事のことや、世間で言われる(あるいは黙認されている)男女の役割論に対する意見のほうがメインかな。
つまり、赤ちゃんの可愛さや成長にズームしたゆるゆるのほほん、という感じの育児本ではありません。
お仕事の悩みなんかは特に、正直。率直。飾るところがない。
著者の山崎ナオコーラさんと言えばエッセイが人気ですが、小説だと「人のセックスを笑うな」が一番有名ですよね。
そんな「作家」である彼女の夫は書店員で、月収はフリーターがハンバーガー屋のアルバイトで得る収入くらい。彼女との年収の差はちょっとどころじゃありません。出世欲もなく、穏やかで威厳なるものとは程遠い、朗読の上手な男性。
一方でナオコーラさんは、自分が金を稼いで、「これで気に入ったものを買いな」という立場が好き。正反対だけど、これがうまくいってる。
このような夫婦に対してよく言われるのが、「男女が逆だね」「カッコイイ女性だね」「男性はプライドが傷つかない?」とかそんなこと。
このような「男女それぞれこうあるべき」という考えに、ナオコーラさんは強い違和感を抱いている。そして、モットーは「フェミニンな男性を肯定したい」。
本当は、フェミニンな男性というのは二元論なので「多様な男性」と、また、肯定したいというのも上から目線なので「魅力的に書きたい」としたいけど、それだとフレーズとしてぐっとこないので“フェミニンな男性を肯定したい”にしたんだそう。
この本には、男女についての持論のほか、夫のこと・育児を通して感じたこと・保活・ファッションについて・仕事が不安で泣いたことなどがとっても正直に、テンポよく書かれていて心地よいです。
※子供の手の届くところに置いておいたら一瞬で落書きされた。
読み終えて、個人的には、とても正しい考えを持つ人なのだなと思いました。この正しいは「正義」というより、純粋で真っ直ぐというイメージです。
そして世の中、男女それぞれこうあるべき、母親や父親はこうあるべき、社会人はこうあるべきなど、「こうあるべき」が溢れているなぁと。
そういえば娘が保育園で覚えてきたのか、男の子だからスカートは履かないとか、女の子は黒のランドセルを選ばないとか、そんなことを言います。本当にギョッとします。そのたびに、スカート履く男の子だっているし、黒が好きな女の子だっていると言っているけど、どこまで伝わっているかなぁ。
ちなみに私の場合は、男女が逆と言われることはないですが、夫のほうがちゃんとした収入があって、私はパートで微々たる金額を稼ぐだけ。年収5倍は違います。
これ、私はずっとずっと、ずーーーっとコンプレックスでした。(いや、今も)
ナオコーラさんのように自分の手でしっかり稼いでいる人が羨ましいし、ダブルインカムだとか、夫婦で正社員でバリバリだから金銭面で馬力が違う!とか聞くと、情けなくて夫に申し訳なくてどうしようもない気持ちになります。
パートでも責任ある業務につかせてもらって頑張っている、と自負はありますが、正社員じゃない。収入少ない。自分の力で暮らせていない。そんな思いが常に付きまといます。
じゃ正社員でバリバリ頑張れば?と言われると、そうすべきだとは思うのですが、これはもうキャラ的に無理。心が弱くて、組織の中で動くのも苦手。人は好きだけど、気を遣ってしまって疲れ果てる。
向いてない・・・・・。
最近やっと、みんながみんなきちんとした社会人じゃないといけないのではない、向いてないと言ってもいい、と思えるようになってきましたが、この本にも少し背中を押されました。
稼ぎたい!という気持ちは変わらずあるんですけど、向いてないのだから皆と同じ方向を目指しても仕方ない、自分のやれることをやるしかない。
ただこういうのって、やっぱり「女性だからできる生き方」なんですよね。女性はそういう生き方もアリだと言われる。でも男性はそんなことじゃダメだと言われる。
だから、ナオコーラさんは「フェミニンな男性を肯定したい」んだと思いました。もちろんフェミニンな男性=私のようにメンタル弱いというわけではないです。
うーん、やっぱり羨ましいな。私もしっかり稼いで、フェミニンな男性を肯定できる人になりたい。(肯定するだけなら稼いでる必要はないのだろうけど、やっぱり稼いでるとハクがつく)
そんなわけで、育児に役立つ情報や勇気がでるようなことがたくさん書いてあるわけではないですが、面白くて、子どもの成長から世の中のことまで、いろいろなことに考えをめぐらせて楽しい読書時間が過ごせる一冊です。おすすめ!